chapter E. Damage
[ダメージ、経年劣化にはどんなものがあるの?]
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退色
chapter D でも少し触れましたが、ヴィンテージの劣化の代表的な一つに顔色やメイクの退色があります。具体的にどういう状況でどのような退色が起こるのかは分かりませんが、一般的に考えて「紫外線」と「熱」は要注意だと思います。退色しているかどうかは、洋服で隠れているトルソの部分と比較してみると分かります。
左の写真の真ん中の子はほぼ退色がないと考えられます。左はチークが若干残っている事から赤味はあまり退色していないようですが、プラスチックの「黄変」がはじまっており肌の黄味がやや強くなってきています。右の子はチークがほとんど残っておらず、赤味が抜けてきており全体に白っぽい印象です。
残念ながらヴィンテージに劣化はつきものです。できるだけ劣化を避ける工夫をしながら、劣化もまた個性として可愛がってあげたいですね。
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↑左:やや黄変、真中:ほぼ退色なし、右:やや黄変と赤味抜け
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光彩の曇り、黒目の色ヌケ、白目の黄ばみ
ヴィンテージブライスの瞳のパーツは白目の窪みにボンドで貼付けてあります。この窪みに光彩から入った光が反射して、瞳がキラキラと輝いて見えるのですが(写真向かって左目)、光彩が劣化して曇ってしまうと光を反射しなくなってしまいます(写真向かって右目)。曇ってしまった光彩を裏側から見ると、表面がすりガラスのようになっていますので、裏から磨けば透明に戻るかもしれません。曇りが生じる理由としては、瞳を取り付けているボンドの溶剤が内部の窪みで揮発し、プラスチックを侵食している可能性があります。
黒目部分の色ヌケは(写真向かって右目)、裏側についた塗料が落ちている場合と、製造時の不良か、プラスチックの内部に気泡ができている場合があります。
色目の黄ばみは、日焼けによる表面の変質と、瞳パーツを取り付ける際にはみ出したボンド部分の劣化が考えられます。
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↑向かって右目に虹彩の曇りと黒抜けがある
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お尻や腰の割れ
お尻や腰の割れもまた、代表的な劣化です。出荷時に付いていたオリジナルのドールスタンドが、足を左右に開かせて固定するタイプだったため負荷がかかったのかもしれません。この部分に割れがあると足が外れやすくなったり、足部分を持って立たせたときに、後ろにブリッジしやすくなります。ただし、割れが狭ければほとんどストレスなく扱えます。
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↑お尻の割れ。最も多いダメージのひとつ
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骨折
ヴィンテージブライスは後ろに3クリックと前に1クリックしますが、膝を骨折してしまうとクリックができなくなります。また膝部分がやわらかくなってしまうため、
まっすぐに立たせる事ができなくなってしまいます。膝の前後に裂けができていると骨折している場合が多いようです。また、上記写真の膝の裂け目の下に針で突いたような穴がありますが、これは「ピンブリック」と呼ばれており製造過程でできるもので劣化ではありません。
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↑膝の骨折と膝下のピンブリック
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メルトマーク
プラスチックに、ゴムなどの他の物が長い間くっついていた場合、プラスチックが侵食され、溶けたような跡が付く場合があります。これが「メルトマーク」と呼ばれるもので、おもちゃ箱の中に長い間放置されていたりするとこのような跡が顔に付いてしまうことがあります。残念ながら直す方法はありませんが、やすりなどで磨けば目だたなくすることはできます。
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ウイッグパーツのずれ
ヴィンテージブライスの頭部はレプリカより若干複雑に作られており、顔パーツとウイッグパーツを接着する際に、ボンドのはみだしや、ウイッグパーツのずれやめくれなどが生じている場合があります。現在なら不良品という事で市場には出回らないと思いますが、当時は結構いいかげんだったようです。
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↑ウイッグパーツ前面部が大きくはみ出している
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髪のウェーブ
劣化の中でも、髪のちりつきには悩んでいる方が多いと思います。髪の状態は保存状態によって決まりますので、髪を美しく保つには、とにかく触らないで、まっすぐ立たせておくこと。未開封品や飾るだけで遊ばれていない子は髪がきれいですが、子供のおもちゃだったり、おもちゃ箱の中に放っておかれた子は、髪がチリチリになっています。髪のきれいな子が欲しいのであれば、保存状態の良い子を探して、手に入れたらできるだけ触らないで置いておくことです。
とは言え、手元に髪がチリチリになった子がいる場合はどうすれば良いのでしょうか。まずは「シャンプー+柔軟剤仕上げ」をオススメします。ちりつきが大幅に改善されるわけではありませんが、髪がなめらかになるのでだいぶ扱いやすくなります。この他に「お湯パーマ」や「アイロンパーマ」で髪を強制的に伸ばす方法があるようですが、残念ながら試した事がないので紹介できません。興味のある方は検索サイトなどで調べてください。
[ シャンプー+柔軟剤仕上げ ]
人形の髪は化学繊維でできていますので、化学繊維用の洗剤と柔軟剤を使います。揉むように洗うとますますちりつきますので、ぬるめのお湯に漬け込むように洗いましょう。洗髪後はタオルで押さえるように水気を取り、立たせて自然に乾燥させます。ドライヤーなどの強い熱は髪を溶かしてしまう可能性がありますので注意してください。
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写真左:1972年に開封され、ずっと立たせたまま保管されていた子。ゆるやかなウェーブが残っています。
右:未開封品は後ろで大きな三つ編みにされており、これが髪のウェーブになるようです。写真には写っていませんが、本来は三つ編みの毛先をヘアピンで留めてあります。(※1)
※1)写真提供:K*さん
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